2024/10/18
人と思想 200 宮沢賢治 ー 発刊のご案内
詩人・童話作家として知られる宮沢賢治(1896~1933)の一生は,仏教とともにあったと言ってよいだろう。賢治は,浄土真宗の信仰のあつい家に生まれながらも,自らの信仰として法華経を選び取った。仏教が語る光あふれる世界に心ひかれた賢治は,やがて自身が,妹トシの死という悲しくつらい経験と向き合う中で,仏教が他ならぬ自分が抱える苦しみをすくい取ってくれる力をもつことを見いだしていく。本書は,このような賢治の思想の変遷を,賢治が父や友にあてて書いた手紙や,賢治の作品を手がかりとして,たどっていこうとするものである。
仏教は,教説だけではなく物語の形でも,自らが見いだした真理を語り伝えてきた。賢治がつくりだした「イーハトヴ」という世界の背景には,そうした物語がひそんでいる。賢治の作品は,私たちに何を伝えようとしているのか。「ほんとう」や「さいわい」ということばに注目しながら,丁寧に考えていきたい。
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