内容紹介
百年前の関東大震災を直接体験,見聞した芥川龍之介・室生犀星・谷崎潤一郎などの文豪・文人・画家たち三〇人が,焦土と化した東京や鎌倉などの被害や人々の罹災の様をリアルに書き残し,また混乱の中での流言飛語と身近な人の悲劇的な行く末に思いを馳せ,復興への提言もした貴重な同時代の歴史的証言集。 また,将来起こりうる大災難への警鐘の書でもある。
わかりやすい注釈付き。
目次(内容と構成)
まえがき
第一章 炎に包まれる大都市・東京
三百年の夢(「新潮」大正一二年一〇月)――宇野浩二
燃える過去(「改造」大正一二年一〇月)――野上弥生子
大震前後(「女性」大正一二年一〇月)――芥川龍之介
日録(「改造」大正一二年一〇月)――室生犀星
地とともに歎く(『大正大震火災誌』大正一三年)――与謝野晶子
露宿(「女性」大正一二年一〇月)――泉鏡花
震災罹災記(「女性」大正一二年一〇月)――木村荘太
その日から翌朝まで(「改造」大正一二年一〇月)――山本有三
焦土の都にて(『大正大震火災誌』大正一三年)――荻原井泉水
◉解説 関東大震災で明暗が分かれた東京
第二章 津波と山崩れにあった美景の地
東京から鎌倉まで(「女性」大正一二年一〇月)――広津和郎
鎌倉震災日記(「改造」大正一二年一〇月)――久米正雄
大震抄(『大正大震火災誌』大正一三年)――北原白秋
全滅の箱根を奇蹟的に免れて〔手記〕(「大阪朝日新聞」大正一二年九月)――谷崎潤一郎
私の覚え書(「女性」大正一二年一一月)――中條百合子
震災見舞〔日記〕(「新興」大正一三年二月)――志賀直哉
◉解説 関東大震災で甚大な被害を受けた湘南
第三章 流言・飛語・警鐘
道聴途説(「女性」大正一二年一〇月)――小山内薫
噂する本能(震災覚書その四)(「改造」大正一二年一〇月)――里見弴
災後雑観(「改造」大正一二年一〇月)――菊池寛
サーベル礼讃(「改造」大正一二年一〇月)――佐藤春夫
最後の大杉(『おもい出す人々』大正一四年)――内田魯庵
砂けぶり(「日光」大正一三年七月・八月)――釈迢空(折口信夫)
◉解説 関東大震災が及ぼした社会的な影響
第四章 取材するジャーナリスト
東京災難画信(「都新聞」大正一二年九月)――竹久夢二
新方丈記(「婦人世界」大正一二年一〇月)――竹久夢二
帰路(『東京震災記』大正一三年)――田山花袋
関東大震災直後(『荻窪風土記』昭和五七年)――井伏鱒二
変った東京の姿 焼跡細見記(「九州日報」大正一二年一〇月)――杉山泰道(夢野久作)
震災画報(『震災画報』大正一二年九月~一三年一月)――宮武外骨
◉解説 関東大震災を見つめたメディアの視座
第五章 絶望から復興への歩み
石油ラムプ(「文化生活の基礎」大正一三年一月)――吉村冬彦(寺田寅彦)
断腸亭日乗(『摘録 断腸亭日乗(上)』昭和五五年)――永井荷風
快活なる運河の都とせよ(「女性」大正一二年一一月)――永井荷風
都市経営に繋る女性の分け前(「女性」大正一二年一一月)――平塚明(らいてう)
眠から覚めよ〔詩一篇〕(「改造」大正一二年一〇月)――秋田雨雀
◉解説 関東大震災から生まれた復興と防災
あとがき
参考文献
協力者一覧