内容紹介
20 世紀の最も重要な小説家とも言われるアイルランドの作家ジェイズム・ジョイスは,『ダブリンの市民』,『若い芸術家の肖像』,『ユリシーズ』などの著者として西洋の文学界において揺るぎない地位を保っている。ジョイスは,当時,イギリスやカトリック教会に「支配されていた」祖国から,自由な表現をしたいと「自発的亡命」を果たし,トリエステや,チューリッヒ,パリなどで執筆を続けた。彼は作品の舞台として,一貫して故郷の首都ダブリンを定め,そこに生きる人々の,自然で,ありのままの姿を映し出そうと執筆に邁進した。後になっては,英語で全てを表現するのは困難と,新たな言語や文体の創造を試みる。
本書では,厳しい貧困や眼病,娘の精神の病の発症など様々な困難と戦いながら生きたジョイスの生涯を辿り,彼の語るアイルランドの歴史を紐解きながら,人間ジョイスを考え,その思想の背景を探っていく。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ ジョイスの生涯
一 家系
二 誕生~幼少期
三 小学校時代―教会への反発の素地の確立
四 中学校・高校時代―教会への反発から憎悪へ
五 大学時代
六 大学卒業以降
七 自発的亡命
八 作家ジョイスの誕生―『室内楽』
九 『ダプリンの市民』―発刊
十 著名作家へ―『若い芸術家の肖像』
十一 世界的作家へ―『ユリシーズ』
十二 『ユリシーズ』以降
Ⅱ ジョイスの文学作品・文学手法
一 文学作品
1 『ダブリンの市民』(Dubliners)
2 『若い芸術家の肖像』
(A Portrait of the Artist as a Young Man)
3 『ユリシーズ』(Ulysses)
4 『フィネガンズ・ウェイク』(Finnegans Wake)
二 文学手法
「意識の流れ」・「内的独白」
三 文学に対する姿勢
ジョイスと実証主義
Ⅲ ジョイスとアイルランド史―概観
一 古代から十九世紀まで
二 十九世紀以降のアイルランド
あとがき
年譜
注
参考文献
引用(参考)文献の表記方法
写真提供
さくいん