内容紹介
ローマ帝政の暴虐・狂態を生き,その運命を「伴侶」とし「対話」したセネカ。ローマ共和政を哲学したキケローと並ぶヨーロッパ精神史の恩人である。一六世紀には,エラスムスがセネカの本格的な著作集を刊行し,カルヴァンがセネカの『寛容について』の細密な注解書を著した。一七世紀には,コメニウスがプラトンとともにセネカを徳育のテキストにすべしと説いた。セネカは哲学者・悲劇作家・宮廷政治家であった。本書では彼を倫理思想家としてのみならずその全体像で描き,セネカの多彩で奥の深い人間性に迫る。
目次(内容と構成)
序文 ―セネカとの出会い―
Ⅰ セネカの生涯 ―セネカとその時代
はじめに ―セネカの生涯の概略と現代的意義
一 幼年時代
二 ティベリウスの時代(一四~三七年)
三 カリグラの時代(三七~四一年)
四 クラウディウスの時代(四一~五四年)
五 ネロの時代(五四~六八年) ―特にセネカの死六五年まで―
六 セネカの晩年
七 補章 二つ
Ⅱ セネカの思想
一 哲学者セネカの独自性
二 哲学・倫理学著作
二-一 三つ目の慰めの書
二-二 政治哲学の作品『寛容について』
二-三 もう一つの政治哲学書『怒りについて』
二-四-一 倫理学の地平(1)『幸福な人生について』
二-四-二 倫理学の地平(2)『恩恵について』
二-五 他の哲学・倫理学作品群
二-六 クィンティリアヌスとモンテーニュのセネカ評
三 道徳簡潔集
四 自然研究
五 悲劇作品におけるセネカの展望
五-一 セネカ悲劇の一般的性格を巡って
五-二 『オエディプス』を巡って
五-三 再びセネカ劇に戻って
六 改めて今セネカを学ぶ意義
あとがき ――ヨーロッパ精神史の二人の恩人――
セネカ年譜
セネカに関する参考文献
さくいん