内容紹介
『生命の起源』の著者であるオパーリンは,一九五五年秋に来日し,彼の著作は広範な読者を獲得した。ソ連の生化学者として親しまれ,日本との交流は生涯にわたって途絶えることはなかった。無生物から生物への物質の進化を探究する試みは共鳴者を広げ,科学的な研究課題として承認されて,国際的な学会の設立へとつながった。本書では,オパーリンの言説の展開をたどり,「生命の本質はその発生の歴史を知ることなしには認識できない」とするオパーリンの思想と立場を検証する。
目次(内容と構成)
プロローグ
Ⅰ オパーリンの訪日
緊張緩和の息吹 ――一九五五年
フルシチョフの時代
日本への紹介
Ⅱ 若きオパーリン
ロシアの古い街で
植物生理学への接近
Ⅲ 「生命の起源」の誕生
植物学会での発表とブックレット『生命の起源』
『生命の起源』1・2節 ――「自然発生説」と「パンスペルミア説」
『生命の起源』3・4節 ――「生きている世界と死んだ世界」と
「結合していない元素から有機化合物へ」
『生命の起源』5節 ――「有機物から生物へ」
進化論と宇宙論の流れの中で
Ⅳ 激動と凍結の中で
イギリス発の「生命の起源」
ロシアの科学者たち
一九三四年 ――時代の転換点
第二次世界大戦期
Ⅴ 本格的な生命起源説
コアセルヴェート説 ――三六年版
五七年版「生命の起源」
始原大気中での有機物合成
Ⅵ 晩年のオパーリンとその思想
大衆に向けて
活動する科学者
晩年の日々
エピローグ ――アリストテレス▼ダーウィン▼オパーリン
あとがきにかえて ――執筆の動機のことなど
年譜
参考文献
さくいん