内容紹介
インドの人々が信仰するヒンドゥー教,そのヒンドゥー教を支えてきたインド哲学,そのインド哲学史上最大の哲学者シャンカラ,これら三者の関係はどのようなものか。また,輪廻と解脱という枠組みの中で,二五〇年以上にわたって解脱を求め続けてきたインドの諸思想,その中でシャンカラが到達した地点とはどのようなものか。そしてシャンカラ師たちは,なぜ聖者たりえたのか。またわれわれはなぜインドの神秘にひかれるのか,これらを本書に明らかにしようとした。
目次(内容と構成)
Ⅰ シャンカラをよりよく理解するために
一 シャンカラ師と初代シャンカラ
(一) シュリンゲーリのシャンカラ師
(二) シャンカラの生涯と著作
二 伝統と革新
(一) ヴェーダ聖典の伝統 ――インド思想における正統と異端
(二) 祭式から知識へ ――呪術的思惟から哲学的思惟へ
(三) インド思想史における第一変革期とその後の学派の成立
(四) インド思想史における第二次変革期とその後のバクティ運動の高まり
(五) 西欧近代との出会いとインド思想史における第三変革期
三 インド思想の次元と軸
(一) ヒンドゥー教とインド哲学
(二) インド哲学における不二一元論学派の思想的位置
Ⅱ シャンカラの思想
はじめに/明知と無明 ――二つの次元
一 自己と自己の本質 ――精神と物質という座標軸に基づく考察
(一) 固体の構造
(二) 精神と物質 ――「私」という意識の成り立ち
(三) 「私」という意識の消滅
二 自己と世界 ――実在と非実在という座標軸に基づく考察
(一) 無明をめぐる問題
(二) 誤謬論
(三) 世界の実在性の三つのレベル
(四) 四つのレベルの意識深化
三 絶対者と世界 ――原因と結果という座標軸に基づく考察
(一) 絶対者ブラフマン
(二) 原因と結果 ――日常的経験の立場
(三) 原因と結果 ――究極的真理の立場
四 解脱への道 ――行為の肯定という座標軸に基づく考察
(一) 行為の肯定と否定
(二) 輪廻と解脱
(三) 行為と知識 ――頓悟の道
(四) 行為と知識と瞑想と信愛(バクティ) ――漸悟の道
五 シャンカラ的なるものと現代
はじめに/シャンカラの目指したもの
(一) 比較思想とシャンカラ
(二) インドの聖者とシャンカラ
あとがき/私がシャンカラに魅せられた理由
年表
参考文献
さくいん