内容紹介
哲学が文学と引き離せないことに気づいたデリダは,哲学と文学の交差を問う,「エクリチュール(書くこと)論」から出発し,言葉がいかにして「知覚された世界」を超えた深みを与えるかを問い続けた。自明性を与えて考えることをやめさせるような概念装置を切り裂きながら,「脱構築」をはじめとする新しい思考スタイルを次々と生み出していった。パリの異邦人,哲学の異邦人デリダは,やがてそのような「異邦性」の経験こそが,普遍化可能性を求めるカントとは異なった新しい倫理の源泉であると考えるようになる。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ 思想の生成
一 哲学前夜
(一) アルジェリアのデリダ
(二) フランスに渡ったデリダ
二 フッサール現象学の通過
(一) 『フッサールの哲学における発生の問題』(一九五四)
(二) 「≪発生と構造≫と現象学」(一九五九)
(三) 『幾何学の起源』序文(一九六二)
(四) 『声と現象 ――フッサール現象学における記号の問題への序論』(一九六七)
三 文学との交差
(一) critique(危機・批判)を書き込む文字
(二) 『エクリチュールと差異』(一九六七)
(三) 『グラマトロジー』(一九六七)
(四) 構造主義のページをめくるアメリカ
四 デリダの哲学
(一) デリダの「言いたい」こと
(二) 差延:defferance
(三) 脱構築:deconstruction
(四) 散種:dissemination
Ⅱ 思想の広がり
一 哲学の終焉?
(一) ハイデガーの「終焉」の迎え方
(二) 固有なものの非固有化
(三) デリダの「終焉」の迎え方
二 テレコミュニカシオンと伝達
(一) 解約学者ガダマーとの起こらなかった「論争」
(二) ベンヤミンとアドルノへの接近
(三) 散種的テレコミュニカシオン
三 哲学と教育
(一) 教育制度における哲学の脱構築
(二) 哲学は誰とともに?
四 「来たるべき掟」のエクリチュール
(一) カフカにおける掟の普遍性と文学
(二) 日付を記憶するツェラーンの詩
(三) ハイデガーが求めるただ一つの性(Geschlecht)
(四) 今日の民主主義と亡霊
おわりに
デリダ年譜
参考文献
さくいん