内容紹介
平安貴族の絵巻は日本文化の雅のルーツとして現代人に果てしなき夢,憧れを誘ってやまないが,宮廷社会の実体は厳しく,それほど美しくもなく雅でもない。表面が華やかであればあるほど,その内部に沈潜する人間の暗部,不断の苦悩や悲しみ,不条理なども際立つ。時の権力者藤原道長の娘に仕えた紫式部は,宮廷生活の現実を厳しく見据えながら,孤独な我が魂を燃焼させるようにあの源氏物語を創出した。彼女の歩み,心像世界を虚心に辿ることにより,その創造のエネルギーの原点を探り,混迷した現代に生きる我々の精神の糧としたい。
目次(内容と構成)
はじめに
第一章 紫式部と宮仕え
(一) 宮仕え女房紫式部
(二) 宮仕えへの道のり
(三) 源氏物語の執筆
(四) 同僚女房たちとのかかわり
(五) 主家の人々とのかかわり
(六) 自照・述懐
第二章 源氏物語の世界
(一) 瀬旬の碑
(二) 没落、そして栄光への道
(三) 暗転・愛と罪と死
(四) 宇治の浄光
第三章 美意識・思念
(一) 華やぎ、やつれ
(二) 自然と人間
年譜
索引