内容紹介
バルザックの『人間喜劇』には,物欲と虚栄,出世欲と情欲,青春の希望と愛,信仰と献身など,およそ人間にかかわるすべてが描かれている。そこに語られている絢爛たる物語の数々は,「西欧の千一夜物語」というべく,また近代市民社会そのものの栄光と悲惨の物語でもある。だが描かれているものは,栄光よりもむしろ悲惨なのであって,バルザックは,「近代」というものがいかに空しく危険かということを描いたのである。この膨大な作品は,一人の天才の苦痛に満ちた生涯の代価として後世に残されたものだ。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ 生い立ち
一 バルザック家の人々
二 歴史的背景
Ⅱ 修行時代
一 文学的野心
二 「青年期の小説」
三 ベルニー夫人との恋
四 事業の失敗
Ⅲ 文壇への登場
一 新たな文学的出発
二 ジャーナリストとして
三 真の出世作
四 「哲学的」作品
Ⅳ 模索と成熟
一 貴婦人へのあこがれ
二 ハンスカ夫人との出会い
三 バルザックの生活習慣
四 バルザックの世界観
Ⅴ 『人間喜劇』の成立
一 ベルニー夫人の死と『谷間のゆり』
二 財政状態の悪化
三 『人間喜劇』の主題
Ⅵ 枯渇と終焉 一 ハンスカ夫人との再開
二 健康の悪化と最後の傑作
三 結婚、そして死
あとがき
年譜
『人間喜劇』作品目録
参考文献
さくいん