内容紹介
私たちは自分を超えた盲目的な力によって制約を課され,場合によっては生死の鍵すら握られていると感じることはないだろうか。カミュはこのような不条理を直視し,明晰に理解しようと努めることをやめなかった。誠実なモラリストであるカミュは,己の言葉と現実とのずれに虚偽を見いだし,そのような人間本性の深淵に潜む自我と権力欲にもスポットライトを当て,これに芸術作品という普遍的な形を与えようとした。本書では,多角的な視点からカミュの生涯と作品に切り込み,現代人としてカミュを読むことの意味とその魅力を探る。
目次(内容と構成)
Ⅰ 生い立ちの光と影
一 浮草のような生まれ
二 学校時代
三 出会いと決意
四 生と自然の充溢
Ⅱ 文化活動とジャーナリズム
一 孤独と世界の調和
二 天職を求めて
三 新聞記者カミュ
四 奇妙な戦争の静けさの中へ
五 孤立と連帯
Ⅲ たたかう市民から栄光の作家へ
一 占領時代
二 パリ解放と戦争の禍根
三 作家カミュの名声と文明批判
四 『ペスト』の成功
Ⅳ 《反抗的人間》と論争
一 反抗論の胚胎
二 ムルソ的反抗
三 反抗的人間
Ⅴ 悩めるカミュ
一 『反抗的人間』の反響
二 伴走と離反
三 アルジェリア戦争
Ⅵ 『転落』
一 沈黙と言葉
二 『転落』の意義
三 二重性の意識
四 原罪と審判
五 『尼僧への鎮魂歌』
Ⅶ 『追放と王国』
一 中編小説集『追放と王国』
二 「不貞」
三 「背教者」
四 「?者」と「ヨナ」
五 「客」
六 「生まれ出ずる石」
七 ノーベル賞と『最初の人間』
あとがき
年譜
引用・参照文献/和文参考文献
さくいん