内容紹介
ヴェーダは,古代インドの僧侶階級バラモンが生み出した宗教聖典の総称である。紀元前一二世紀ごろに成立したリグ-ヴェーダは,インド-ヨーロッパ語族最古の詩文で編まれた神々への讃歌集である。本書はこのリグ・ヴェーダから,インド最初の哲学書ウパニシャッド文献に至る古代インドの思想の流れをたどる。その後インドで展開した諸思想は,このヴェーダからウパニシャッドに至る思想をどのように評価するかで大きく二つに分れた。インドに生まれた思想を理解するためには,ヴェーダを淵源とする思想の流れを知る必要がある。
目次(内容と構成)
はしがき
序論
第一節 インダス文明
第二節 アーリア人について
第一章 リグ・ヴェーダ
第一節 リグ・ヴェーダの成立年代
第二節 リグ・ヴェーダの神格について
第三節 リグ・ヴェーダの自然新賛歌
第四節 ヴァルナ神(Varuna)と天則(リタ)
第五節 インドラ(Indra)(帝釈天)
第六節 その他の神格
第七節 リグ・ヴェーダの創造神話 ――第十巻より――
第八節 リグ・ヴェーダの詩作行為および言葉について
第九節 リグ・ヴェーダに見られる新たな思潮 ―懐疑思想、無神論的思想そして帰一思想―
第十節 リグ・ヴェーダに見られる人間の死後の運命
第二章 アタルヴァ・ヴェーダ
第一節 インドの呪文について
第二節 アタルヴァ・ヴェーダの哲学的詩編
第三章 サーマ・ヴェーダ
第四章 ヤジュル・ヴェーダ
第五章 ブラーフマナ(梵書)
第一節 梵書の時代
第二節 梵書の種類
第三節 梵書の内容
(一) 梵書の神観念 (二) 梵書の祭式理論 (三) 梵書の世界観
(四) 梵書の死生観 ―輪廻説の萌芽 (五) 盆書の創造神話
(六) 梵書の中の挿話
第六章 アーラヌカヤ(森林書)
第七章 ウパニシャッド
第一節 ウパニシャッドの種類
第二節 ウパニシャッドの成立時代とその社会的背景
第三節 ウパニシャッドの哲人たち
第四節 ウパニシャッドも成立年代と成立場所
第五節 古ウパニシャッド梗概
第六節 ウパニシャッドの中心思想
(一) 実在の諸様相の相互関係
(二) 世界は一なる実在から出現し、その中へと融合し去ること
(三) <存在>と<意識>――表層から深層へ
(四) 通常は相互排除すると考えられる諸事情の逆説的一致
(五) 生と世界とを包み込む円環
第八章 (討論) 祭式
参考文献
インド思想史年表
さくいん