一般書籍

悲劇と福音

新装版 人と思想 160

著者・編者 佐藤 研
判型 新書
ページ数 192ページ
定価(税込) 1,100円
ISBNコード 978-4-389-42160-1
発行年月日 2015/9/10

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内容紹介

「悲劇的なるもの」という要素は,原始キリスト教の成立と発展にいかに関わったか。アリストテレスを手がかりに,「悲劇的なるもの」の基本的条件を探り,それらの要素を最古の福音書マルコに適用する。さらにキリスト教最初期の事件そのものにも適用し,エルサレム原始教会の誕生,使徒パウロの事柄把握を「悲劇的」感性の展開した姿として把握する。「悲劇的なるもの」との出会いこそ,後に「キリスト教」として発展する運動の母胎であった。原始キリスト教は,悲劇に遭遇した者たちの心の軌跡として読み直すとき,思いがけない生々しさで甦る。

目次(内容と構成)

序 ――問題設定
第一章 文学作品における「悲劇的なるもの」
  一  「悲劇的なるもの」とは ――アリストテレス『詩学』より
  一・1 はじめに
  一・2 アリストテレス『詩学』
  一・3 文芸批判的観点から
  二  悲劇的文学作品の定義
第二章 原始キリスト教における悲劇的文学の造形
  一  マルコ福音書
  一・1 「筋」の三要素 ――「逆転」「認知」「苦難」
  一・2 悲劇性ゆえの顕現物語の欠如
  一・3 悲劇の二重化
  一・4 「性格」について
  一・5 受容論的考察 ――悲劇物語との一体化のメッセージ
  二  前マルコ受難物語
  二・1 まえおき
  二・2 テキスト
  二・3 特質
第三章 最初期のキリスト教における「悲劇的なるもの」の発現
  一  歴史における「悲劇的なるもの」
  二  イエスの十字架事件
  二・1 イエスの生涯の概略
  二・2 悲劇的事件としての十字架事件
  二・3 「イースター事件」
  二・4 「喪の作業」としての原詩キリスト教の設立
  二・5 「喪の作業」の失敗 ――イスカリオテのユダの謎
  三  パウロ
  三・1 パウロの生涯の略述
  三・2 その「回心」
  三・3 十字架の悲劇との遭遇
  三・4 「十字架の神学」
  三・5 し贖罪の神学と十字架の神学
  三・6 パウロからマルコへ
第四章 原始キリスト教における「悲劇的なるもの」の衰退と残存
  一  パウロ的潮流において
  一・1 「パウロの名による書簡」の中の非悲劇化
  一・2 コロサイ人への手紙とエフェソ人への手紙
  一・3 その他の「パウロの名による書簡」
  二  福音書において
  二・1 マタイによる福音書
  二・2 ルカによる福音書
  二・3 ヨハネによる福音書
  三  悲劇化されえぬもの
  三・1 ヨハネ福音書を例に
  三・2 「非悲劇化」の中でも消し得ない点
結論 ――悲劇的なるもののキリスト教的意味
あとがき
参考文献