内容紹介
一五四〇年早春,派遣されるはずの宣教師が病に倒れた。ザビエルはただ一言「私を遣わしてください」と,再び帰ることなくアジアへ旅立った。九年後,「もっとも誠実で英知に富む民」と報告する日本へ,鹿児島から戦乱の都,山口,大分とわずか二年の滞在中,人々と出会い,キリストの福音を宣べ伝えたが成果は少なく,その努力は挫折したかに見えた。屈することのないザビエルの目は中国を通じて再び日本へと向けられたが,大陸を目前に上川島でともにも看取られず神のみもとに召された。四六歳。しかし,死によってザビエルの信頼と希望と愛の火は消えることはなかった。若い人々を育てるセミナリヨ,コレジヨやキリシタン版の印刷は西欧と日本の文化の架け橋となり,苦しむ人の重荷をともに担う十字架の愛は,厳しい迫害や殉教の中に潜伏キリシタンを二五〇年支え続けた。人間ザビエルの生き方は現代の私たちになにを語りかけているのであろうか。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ フランシスコ=ザビエルの生涯
一 旅立ちの日
二 大航海時代の幕開け
三 フランシスコの誕生とその時代
四 イグナチオとの出会いとイエズス会の創立
五 インドへの旅立ち
六 あこがれの日本へ
七 鹿児島での初穂
八 平戸 ―博多―山口へ
九 上洛そして離京
一〇 山口での宗教活動
一一 別れ、豊後からインドへ
一二 中国へも福音を
一三 障害を越えて
一四 中国入国への強い意志
一五 志なかばの死
Ⅱ フランシスコ=ザビエルの志を継いで
一 「すべての民に」
二 キリスト教を頂点とした出会い
三 出会いの実り ―キリシタン版
四 出会いの懸橋
五 ヨーロッパ科学思想の受容
六 より大いなる道
七 潜伏と復活
Ⅲ キリスト教と日本
一 日本とヨーロッパの出会い
二 明治期のキリスト教
三 現代日本とキリスト教
年譜
参考文献
さくいん