内容紹介
モーセに始まる古代イスラエルの預言者たちは,ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の源泉となった人々である。預言者の宗教の最大の特色は,超越者の啓示を直接受領して活動するところにある。ここに彼らの宗教体験の普遍性の根拠がある。さらに彼らの宗教の特色は,直接的啓示によって,あらゆる権力や伝統から自由になるところにある。しかし,その結果逆に自らの権威を絶対化し,再び強固な伝統を形成する危険も持っている。東洋の宗教である仏教も,その教えのゆえに,預言者敵宗教の一つに数えることができる。西方の普遍的宗教の源となった古代イスラエルの預言者たちを学ぶことは,もう一つの普遍敵宗教である仏教との対比を通して,現代世界の切迫した課題である諸宗教間の真剣な対話に新しい可能性を切り開くであろう。
目次(内容と構成)
まえがき
Ⅰ 『旧約聖書』とは何か
一 古代イスラエル民族
二 初期ユダヤ教団
三 ユダヤ教の正典としての『旧約聖書』
Ⅱ 預言者とはなにか
一 古代オリエント世界とその宗教
二 預言者的創唱宗教
三 宗教・民族・教団
Ⅲ 時代区分
一 預言の時代区分
二 黙示文学の時代区分
Ⅳ 初期預言=モーセからエリシャまで
一 モーセとイスラエル民族の成立
二 ヨシュアと部族連合
三 士師たちと予言者たち
四 預言者サムエルとサウル王国
五 ダビデの政策と預言者ナタン
六 ソロモンの圧政と北エスラエルの独立
七 預言者エリヤと王アハブの対決
八 イエフ革命とエリシャの予言者団
Ⅴ アッシリア帝国の興隆と古典期の預言
一 預言者アモス
二 預言者ホセア
三 預言者イザヤとミカ
Ⅵ アッシリア帝国から新バビロン帝国へ
一 時代の転換
二 宮廷予言者たち
三 最後の古典期予言者エレミヤ
四 黙示文学へ向かう預言者エゼキエル
五 捕囚の帰還と第二イザヤ
六 メシア像の転換と預言者
Ⅶ ユダヤ教団の確立と黙示文学
一 ユダヤ教正統主義と中期黙示文学
二 ダニエルの黙示
三 黙示文学から新しい預言へ
年譜
参考文献
さくいん