内容紹介
トマス=ハーディは 一九世紀から二〇世紀にかけて活躍したイギリスの代表的小説家・詩人である。ハーディは生まれつき心やさしい人間であった。ハーディの思想は,自分が社会的な弱者の一人であるという意識から生まれたものである。大英帝国繁栄の陰で苦しむ貧乏な人々や,不幸な女性たちに対して同情する。戦争が起これば,駆りたてられて遠い異国で死んでいく兵士たちの無念さを思いやる。さらに広げれば,戦争を起こす権力者や,政治家,そして,貧乏人をつくる階級社会を批判し,特権階級に対する怒りを表現する。ハーディの生まれ育ったドーセット州は美しい自然に恵まれている。ハーディは,その大地の上で働く人たちを愛し,その心情を表現した。また,近くにいた小動物,鳥,家畜に愛情を寄せた。そして動物愛護の気持ちを抱き続け,動物を虐待する人間を告発した。
目次(内容と構成)
まえがき
Ⅰ トマス・ハーディーの生涯
一 生い立ち
二 ロンドンでの修業
三 コーンウォルの恋人
四 小説家としての出発
五 故郷を小説の舞台に
六 小説家としての栄光と苦難
七 小説家から詩人へ
Ⅱ トマス・ハーディーの思想
一 真実を凝視する作家
二 キリスト教に対する懐疑
三 特権階級批判
四 ヴィクトリア朝の偽善に対する反発
五 社会的弱者への同情
あとがき
年譜
参考文献
さくいん