内容紹介
西行はただの過去の歌人であろうか。二三歳の若き日に,出家して歌と旅の生涯におのれを委ねた。そういう西行の人生が今,混迷の世紀末を生きる私たちの心を惹きつけている。源平が覇を競い,昨日の覇者が今日はもろくも消えていく未曾有の激動の時代を西行は生きた。人間の真の自由と精神の飛翔を求めて西行は歩いた。そういう西行の人生をたどることによって,私たちもまたこの混迷の時代を生き抜く精神の糧を得られるにちがいない。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ 時代
壇ノ浦の戦い
戦乱の時代に生きた西行
院政の展開と西行
保元の乱
平治の乱
Ⅱ 出世
出家の動機をめぐって
厭世説
失恋説
政治原因説
文学と宗教
高野望・西行をめぐって
Ⅲ 旅
西行における旅の意味をめぐって
奥州への最初の旅
奥州への再度の旅
四国への旅
Ⅳ 自己をみつめて
花と西行
月と西行
大峰の月
地獄絵を見て
自然に随順する心
Ⅴ 新古今集の成立
勅撰集と私家集をめぐって
後鳥羽院の執念
Ⅵ 生涯の花を求めて
俊成・定家との親交
御裳濯河歌合と俊成の評
宮河歌合と定家の評
Ⅶ 追憶の西行をめぐって
其の貫道するものは一なり
自由と漂泊
Ⅷ 和歌史梗概
西行年譜
文献
さくいん