内容紹介
ジャーナリズム,文学の隆盛を含めて,近代という今の社会システムが確立した一九世紀。『三銃士』一作で二億円,『モンテ- クリスト伯爵』で二億数千万円等々……年収数億円を誇った稀代の流行作家アレクサンドル= デュマ。彼はまた,無類の浪費家でもあった。近代が最も近代らしかった19世紀フランスの枠の中で,最も近代人らしく発現したデュマという人物を捉え直す。近代の延長である現代がより鮮明に見えてくると同時に,二一世紀を貫く社会システム変革の予感に私たちはおののかされるであろう。
目次(内容と構成)
まえがき
Ⅰ デュマ文学誕生の秘密
混血の貴族
巨漢の鬼将軍
父とナポレオン
Ⅱ デュマがデュマになるまで
父の死を越えて
つらいパリ生活
演劇でパリを征服
Ⅲ デュマはなぜ成功したか
人間存在の本質的変革
「近代」のエピステーメー
近代文学の起源としての暗黒文学
Ⅳ 小説化への飛躍
個人的な体験を戯曲に
『三銃士』の誕生
『三銃士』の秘密
Ⅴ ベストセラー作家として
「小説製造アレクサンドル=デュマ会社」
『モンテ-クリスト伯爵』の成立
豪邸「モンテ-クリスト城」
Ⅵ 巨人の時代の終焉
デュマの破産
不撓不屈の亡命生活
パリへの帰還
Ⅶ デュマのあとにデュマはなし
マケとの裁判
晩年のデュマ
デュマ文学と「近代」
あとがき
年譜
参考文献
さくいん