内容紹介
彗星のように,一九世紀の世紀末を駆け抜けたギィ= ド= モーパッサン。四三年という短い生涯に残した作品はゆうに三〇〇編を越える。短編「首飾り」,中編「脂肪の塊」,長編『女の一生』,どれをとっても傑作というほかはない。フローベールの薫陶を受け,鋭く磨き上げられた写実主義の筆法には,世界中の作家が称賛の声をあげた。生きることの快楽も貪欲に飲みつくすモーパッサンとは,皮肉とユーモアとそして悲哀に満ちた,飽くなき人間の探究者ではなかったか。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ モーパッサンの生涯
温暖なノルマンディーで
役人暮らしと文学への道
小説家として
病と死の影
Ⅱ モーパッサンの文学世界
詩作品
中・短編小説
ノルマンディーの風土から
戦争の果実
小役人に悲喜劇
娼婦の館から
怪奇と幻想
Ⅲ 長編小説の構築
冷徹さと憐れみと――『女の一生』
内的矛盾の発見――『ベラミ』
時代気質の描写――『モントリオル』
永遠のテーマ、近親憎悪――『ピエールとジャン』
老醜への嫌悪――『死のごとく強し』
新時代の恋愛の不毛――『われらの心』
Ⅳ 紀行作家として
南方への旅――『太陽の下へ』
南フランス周航――『水の上』
イタリア周航――『放浪生活』
あとがき
年譜
参考文献
さくいん