内容紹介
シュニツラーは,森鴎外の『恋愛三昧』の翻訳などで早くから知られ,度々上演されたので,古い世代にはファンが多い。戦後は人気も下火となり,その名も忘れられかけていたが,最近の世紀末ブームとともに再び注目されるようになってきた。しかし彼を社会性を持たない,愛とエロスの作家と考える先入観は未だに全く改まっていない。愛とエロスの作家であることも事実だが,彼の作品がいかに世紀末から今世紀初めのウィーンの社会的諸問題と対決していたかという側面も,本書で明らかにしたい。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ 愛と死の主題
シュニツラーとその時代
出世作『アナトール』
エロスと死の作家
エロスの戯曲『輪舞』
Ⅱ 三つの自然主義的社会劇
婦人問題のテーマ ――『メルヘン』
決闘のテーマ ――『野獣』(禁猟期なしの獣)――
社会の非人間性への批判 ――『遺産』――
Ⅲ 多彩な作品群
一幕物のチクルス
近代小説の試み ――『グストゥル少尉』――
短篇小説と一幕物会話劇
異色の歴史劇
心理会話劇の傑作
Ⅳ ユダヤ人問題をめぐって
『自由への道』と『ベルンハルディ教授』
Ⅴ 晩年のシュニツラー
第一次世界大戦の勃発
不遇な晩年
あとがき
年譜
参考文献
さくいん