内容紹介
人間が空と飛ぶとはどういうことか。飛行機は,原始以来人類を縛ってきた重力という運命から,人間の肉体,そして精神を解放した。飛行機の登場で人間は初めて地上的,日常的な時空を離れ,宇宙的な思想に手が届くようになった。『星の王子さま』の作者サン=テクジュペリはパイロットとして天空を駆けめぐりながら,地上の人間社会を超える倫理と夢と「時間」を創造し,文学作品に定着した。彼が何を考え,何を感じたかを知ることは,二一世紀,そしてその先の時空に向かって飛翔する翼を,われわれ人間に与えてくれることだろう。
目次(内容と構成)
まえがき
Ⅰ 一九〇〇年生まれのパラドックス
遅れてきた貴族の子
やすらぎの域――幼年時代
飛行機との出会い
パイロットへの道
Ⅱ 砂漠の錬金術
命がけのフロンティア
『南方郵便機』は失敗作か?
Ⅲ 文学は飛翔する
南アメリカの空
『夜間飛行』のマルチ-フォーカリゼーション
Ⅳ 大地の哲学
長距離飛行に挑戦
サン-テグジュペリの政治社会思想
もう操縦桿は握れない?
『人間の土地』の行動主義
Ⅴ 崩壊する「大地」を前に
戦争――決死の偵察飛行
遠い国アメリカ合衆国へ
『戦う操縦士』の思想性
Ⅵ サン-テグジュペリ神話の成立
『星の王子さま』のミステリー
たとえ撃墜されても
『城砦』――残されたバベルの塔
Ⅶ 比較文学的位置づけ
世界文学の中で
日本におけるサン-テグジュペリ
推薦の辞
あとがき
年譜
参考文献
さくいん