内容紹介
一九七三年七月,ホルクハイマーが亡くなったおり,数多くの新聞はその死を悼んで記事を載せた。彼の偉大さを讃えるものから,彼の批判的・変革的姿勢に視点をあてたもの,さらにペシミズムならびに「あこがれ」論に焦点をあてたものに及んだ。これらは,彼の多彩な顔を示しているといえよう。哲学の真意が現存するものの批判にあることを根本とし,人間によって形成されたこの文明が,何故に真に人間らしい状態へ進むかわりに,たえず新しい一種の野蛮へ落ち込んでいくか,を問い続けた哲学者,その相を追ってみようとする。
目次(内容と構成)
ホルクハイマーとの出会い
Ⅰ 哲学者への歩み
家庭と青春時代
大学生活と哲学者への道
Ⅱ 社会研究所とともに
フランクフルト学派の拠点
Ⅲ 伝統的理論と批判理論
「批判理論」の背景
伝統的理論
批判理論
フロイトへの道
Ⅳ 権威主義的人間と権威主義的国家
家族と権威主義的人間の形成
権威主義的国家
Ⅴ 啓蒙の弁証法
啓蒙の光と影
啓蒙の概念
神話と啓蒙
啓蒙と道徳
文化産業――大衆欺瞞としての啓蒙
反ユダヤ主義の諸要素
Ⅵ 理性の腐蝕
理性の主観的形骸化
相対立するえせ特効薬
自然の反乱
個人の没落
批判としての哲学
Ⅶ ドイツ帰還 活動の再開
Ⅷ 管理社会と自由
O=ヘルシェとの対話(一九七〇年)における
Ⅸ 絶対他者へのあこがれ
H=グムニオールとの対話(一九七〇年)より
Ⅹ 逝去によせて――新聞報道――多彩な横顔とヒューマニスティックな人柄
あとがき
年譜
参考文献
さくいん