内容紹介
■現在、親鸞についての著述は極めて多いが、明治中期、科学的な史眼には、親鸞は架空の人物として映っていた。
■やがて同じ科学的な史眼によって、親鸞の実在が確認され、時とともにその人間像は、鮮やかに描き出された。
■とりわけ、専修念仏に対する大弾圧は、親鸞を法然とともに流罪としたが、それによって反権力者としての親鸞、また悪人こそ救済の対象という悪人正機説の提唱者としての親鸞の映像を一層鮮明に結ばせることとなった。
■八〇〇年の歳時をこえてもなお、現代人に、現代社会に機能し生きている親鸞の「いのち」が、いかに培われたのか、本書はその根源を解明しようとするものである。
目次(内容と構成)
まえがき
Ⅰ 末世の到来
末法濁世
◇平安仏教の変貌 ◇陰陽道 ◇変転する社会 ◇末法思想
親鸞の生いたち
◇出自と誕生 ◇『親鸞伝絵』 ◇出家 ◇比叡山の修行 ◇六波羅蜜
Ⅱ もっぱら念仏を
法然に会う
◇六角堂参観 ◇太子示現の文 ◇法然門下にはいる
阿弥陀仏の救い
◇法然の教え ◇選択 ◇専修念仏 ◇『選択集』書写 ◇善信と改名 ◇信心の論争 ◇信か行か ◇経典の註記
結婚と流罪
◇法然教団の性格 ◇七か条の制戒 ◇興福寺奏状 ◇法然・親鸞の流罪 ◇親鸞流罪の理由 ◇結婚についての救世観音の夢告 ◇結婚の時期 ◇一念義 ◇非僧非俗 ◇流人の生活 ◇恵信尼
Ⅲ 浄土真実の教え
伝道への旅
◇流罪をゆるさる ◇常陸への移住 ◇読経よりは布教 ◇山伏弁円の帰伏 ◇念仏集団と既成宗教 ◇親鸞とその門弟 ◇門徒の制戒 ◇京都に帰る
『教行信証』を著わす
◇ 『教行信証』の執筆 ◇ 『教行信証』の構成 ◇他力の救い ◇『唯信鈔』の書写 ◇和讃の撰述
異端の歎き
◇造悪 無礙 ◇専修賢善 ◇善鸞事件 ◇念仏弾圧 ◇善鸞の義絶
◇呪術への傾斜 ◇秘事法門
Ⅳ 美の超尅
自然法爾
◇帰洛後の動静 ◇如来と等し ◇自然のことわり ◇恵信尼の帰越 ◇親鸞の示寂
造形美の否定
◇名号を本尊に ◇造形美の否定 ◇親鸞依用の名号本尊 ◇高層像 ◇親鸞の肖像 ◇寺塔を建てず ◇葬祭の否定
V 教団の発展
教団の形成
◇大谷廟堂の創建 ◇三代伝持の血脈 ◇本願寺の創唱 ◇地方教団の形成 ◇高田門徒 ◇明光系教団 ◇地方教団の分立
教団の発展
◇念仏者の物的結合 ◇本願寺教団の発展 ◇一向一揆
◇教化者教団の確立
あとがき
年 譜
参考文献