内容紹介
19世紀半ばのアメリカは、奴隷制度を争点として、南北分裂の危機に見舞われていた。建国以後、最大の危機の時代に大統領になったリンカン。彼の名を聞くとき、「奴隷解放の父」という言葉を思い浮かべる。
だが、実際の彼は、奴隷解放よりむしろ連邦の維持を重んじていた。彼の真髄は、強烈なナショナリズムにあったのである。
本書は、リンカンが、アメリカの理想の実現と南北の分裂の危機という難しい現実問題にどのように対処していったかを、その実像を求めて人間くさく描いた力作である。
目次(内容と構成)
目次
はじめに
Ⅰ 悲しみの旅路
スプリングフィールドへ
葬送の列車/汽車は西へ/リンカン故郷に眠る
ワシントンへ
悲しみに溢れた挨拶/汽車は東へ/暗殺計画/威信のない次期大統領
Ⅱ 政治家をめざして
ケンタッキーとインディアナ時代
生い立ち/リンカンは怠け者だった/ニュー‐オーリンズへの旅
ニューセイラムの生活
再びニューオーリンズへ/新しい野心/州下院議員に初当選/現実的な政治家リンカン
スプリングフィールドの弁護士
州都スプリングフィールドへ/リンカンの女性問題/メアリーとの結婚/法律事務所/連邦下院議員に当選/「明白なる運命」とメキシコ戦争/「地点」の質問/失意の時代
Ⅲ 南北対立の激化
ナショナリズムとセクショナリズム
アメリカ的信条/セクションの対立/奴隷論争
南北の対立と妥協
ミズウリ協定/「一八五O 年の妥協/カンザス・ネプラスカ法とダグラス
リンカンのアメリカ
アメリカの象徴、イリノイ州/ピオリア演説/共和党へ参加/「失われた演説」/「自由、平等の国」/アメリカは一つ/南部に反逆の権利なし
Ⅳ 大統領への道
騒乱の奴隷問題
ブキヤナン大統領/「ドレッド=スコット事件」/カンザスの騒乱
「住民主権」対「封じ込め政策」
「分れ争う家」/「住民主権」を攻撃/選挙戦の開始/リンカン・ダグラス論争/フリーポートの質問/「避けることのできない軋轢」
最初の大統領選挙
ジョン=ブラウン事件/「正義は力なり」/「 棒杭づくりの大統領候補」/候補者に指名/初当選
妥協を拒む
南部の脱退/妥協の試み/「奴隷制拡大に対して妥協はない」/「封じ込め」に固執/リンカンの閣僚/「殺そうと思えば何千の方法がある」
Ⅴ 南北戦争その一
戦争勃発
大統領就任式/放置か補給か/シュワード覚え書/戦争はすぐ終わる/南部連合国の力/ワシントンの危機/プルランの戦い/苦戦は続く/ミシシッピ川制圧
「奴隷解放の父」
「トレント号」事件/「奴隷解放の父」の実像/奴隷解放宣言/「二千万人の祈り」に答える/解放宣言の効果
Ⅵ 南北戦争その二
ゲティスパーグのリンカン
ゲティスパーグの戦い/西部戦線とニューヨーク暴動/「未完の事業に身を献げよう」/ゲティスバーグ演説の意味
苦難の年
グラントとシャーマンの登場/リンカンの再建案/「再選されそうもない」/不人気のリンカン夫人/大差で再選
平和への模索
和平会談と戦争終結案/第二次大統領就任式/「すべての人に慈愛を」
運命の日
暗殺未遂事件と夫人の錯乱/南部の降伏/暗殺の夢/最後の演説/運命の四月一四日/「世は変われど、彼は万代に残る」
おわリに
年譜
参考丈献
さくいん