内容紹介
『三国志』の英雄・曹操は「悪人」か?
第一人者が描き出す曹操―その真の人間像
「槊を横たえて歌を賦す」といわれる第一級の武将
そして詩人でもある曹操、その魅力の源泉は何か!
『三国志』の覇者、魏の曹操は、「槊を横たえて歌を賦す」といわれる第一級の武将であり、第一級の詩人でもあって、まことに魅力に富む人物である。非常なほどの冷酷さと激情に揺れるやさしさをあわせ持つ、その性格と行動が、一個の矛盾体として緊張をはらみ、人間曹操の魅力を構成する。ところが、かく異彩を放つこのきわめて魅力的な人物は、中国でながい間、悪玉として憎まれ役を演じつづけてきた。
本書は、こうした『三国志演義』などによって形成された虚像を排し、当時の常識的な思考の枠をはるかに超越していた武将、また、この時代に突出していた詩人、曹操の実像を鮮明に描き出す。
目次(内容と構成)
目次
はじめに
Ⅰ 曹操の生涯
一 悪玉視された曹操の実像
奸智にたけた悪玉/『三国志演義』の曹操/『世説新語』の曹操評価/『三国志』魏書の曹操
二 宦官の家の子として育って
曹氏の家系/曹氏の墳墓群/贅閹の遺醜/曹操の風采/若き日の曹操と袁紹
三 『孫子』に学んで智を磨く
『孫子』に学ぶ/「孝廉」に選ばれる/黄巾反乱軍を鎮圧/俗信・慣習にとらわれず
/濁世を避け天下の清むを待つ
四 軍閥打倒をめざして独自の挙兵
宦官の専制支配終わる/董卓に追われる/打倒董卓/武力集団の結集/反董卓軍の敗走
五 時代を描いて挽歌を詠ず
五言古詩の史詩/二曲の挽歌/群雄割拠/青州黄巾軍を破る
六 群雄として自立した非情な挑戦
弔い合戦/張?の謀反/陳宮の裏切り/筍彧と程昱/程昱の進言
七 天子の奉戴と屯田制の実施
献帝を奉じる/八竜の一人筍彧/先見の明/袁紹の優柔不断/屯田制の施行
八 劉備、曹操を頼る
曹昂を身代わりに/呂布、曹操の軍門に降る/陳宮の最期/劉備、曹操の幕下となる
九 華北統一にむけて袁紹と対決
戦わずして勝つ/主戦論に傾く袁紹/『孫子』の戦略/官渡の戦い
一〇 官渡で袁紹を破り中原の覇者となる
天下分け目の戦い/許攸の智略/袁紹軍の敗北
一一 修学令の布告
橋玄の教え/曹操慟哭す/修学令を布告する
一二 曹操を嘲弄した文人孔融
孔子の子孫にあたる孔融/孔融、曹操を嘲弄する/孔融、断罪に処せられる
一三 曹操、赤壁にて敗北
立ちはだかる劉表と孫権/曹操、漢の丞相に任じられる/諸葛孔明の登場/赤壁の戦い
/曹操、敗北を喫す
一四 「求賢令」と筍彧の死
「求賢令」を発令する/筍彧、曹操の逆鱗にふれる/魏国の誕生
一五 「五斗米道」教国を懐柔
「五斗米道」教国/「義舎」/陽平関陥落/張魯の待遇
一六 曹操、魏王となる
司馬仲達の進言/建安一九年の「求賢令」/曹操、魏王となる
一七 偉大なる英雄曹操の死
天下三分の計/孫権、呉蜀同盟を破棄する/曹操の死と漢王朝の終息
Ⅱ 曹操の文学
一 曹操と「建安の文学」
雅に慷慨を好む/建安の文学/「短歌行」
二 曹操の従軍詩
「却東西門行」/「苦寒行」
三 曹操詩の絵画的な風景描写
「歩出夏門行」
四 長寿を願う曹操の遊仙詩
神仙養生の術/「秋胡行」第一首/「秋胡行」第二首/「遺令」
五 清峻で通脱であった曹操の散文
通脱を尊ぶ文章/清峻の風格を備えた文章
六 曹丕の文学独立宣言
魏国の太子/「七歩」の詩/徳を以て民を化す/「典論」一〇〇篇
七 天才詩人曹植
前過を追悔する/後継者争い/曹操最晩年の詩/曹丕、魏の文帝と称す
あとがき
年譜
さくいん