内容紹介
日本の江戸幕府、中国の清王朝とならんで、インドのムガル帝国はアジア旧帝国の最後の形である。
しかし、ムガル帝国は、幕藩体制や清王朝の官僚体制のような整然とした統治組織は生み出さなかった。生み出そうとした歩みも途中で挫折してしまったのである。
本書は、ムガル帝国の実質上の基礎をつくり、また、独自の統治制度改革を試みた第三代目のアクバル大帝の意図・事業を中心にすえながら、ムガル時代の姿を略述し、さまざまな角度からインド中世の実態に迫ったものである。
目次(内容と構成)
はじめに
Ⅰ インド史のなかのムガル帝国
古代から中世への変容
古代国家の成立/マウリヤ王朝からグプタ王朝まで/
インド中世の成立/中世村落共同体/異民族の侵入と征服
イスラームインド
イスラームインドの時代/奴隷王朝/ハルジー王朝/トゥグルク王朝/
サイイド王朝とローディー王朝/農民の反抗/バーブルのインド侵入/
フマーユーン/飢饉と圧政/農民反乱/マラータ族の抵抗
Ⅱ アクバル
皇帝権力の上昇
幼少年時代のアクバル/フマーユーンのインド帰還/パーニーパットの戦い/
バイラーム=カーンの失脚/ペチコート政権/皇帝権力の上昇/ラージプートとの同盟/
アクバル権力の確立/対ヒンドゥー政策/東方、南方への征戦/パンジャーブへの出撃/
カーン=ザマーン征討/チトールの攻撃/ランタンブホールの占領/アクバルの王子たち/
新首都の経営/ラルフ=フィッチの描写/グジャラート征戦
専制国家建設の試み
トダル=マルのグジャラートでの改革/行政改革/軍馬烙印規則/中世専制帝国を目標/
東方征服/信仰の家/キリスト教とアクバル/行政改革の実施とその失敗/
カロリー制度/ダーウードの敗死/ラーナーの抵抗/若干の改革/ベヘーラの感動/
ジェスイット宣教師とアクバル/無欠の勅令/ベンガル、ビハール軍の不満/
反乱のはじまり/シャー=マンスールの改革/ムハンマド=ハーキムの侵入
遠征と拡大
パンジャーブ進出/神聖宗教/西北の経営/カシュミール併合/ユースフザイ平定戦/
デカンヘの進出/アフマドナガル攻撃/南方遠征/サリーム王子の不服従/アクバルの死
Ⅲ アクバル宮廷の人びと
ラージャ=トダル=マル─能吏から武将へ─
能吏にして武将/将軍の道/死に至るまで勤務
カージャ=シャー=マンスール─一途な財務官─
財務官の才能/シャー=マンスールの人がら/ベンガル、ビハール軍の反乱/密書事件
ラージャ=マーン=シング─アクバルの同盟者─
ビハーリー=マル/バーグワン=ダース/マーン=シング/オリッサの併合/クスロー党
ムザッファル=カーン─大将軍の道─
台頭/新しい権臣/ベンガル、ビハール軍の反乱
Ⅳ アウラングゼーブまで
第四代皇帝ジャハーンギール
ジャハーンギールの生活/クスロー王子の反乱/ヌール=ジャハーン/小反乱/
ラーナーとの和議/アフマドナガル攻撃/ジャハーンギールの王子たち
第五代皇帝シャー=ジャハーン
シャー=ジャハーンの即位/タージ─マハール/アフマドナガル王国の滅亡/
カンダハルの攻防戦/シャー=ジャハーンの王子たち/建造物/アウラングゼーブの台頭/
帝位継承戦
第六代皇帝アウラングゼーブ
帝位継承戦はつづく/厳格なムスリム/各地の平定/ヒンドゥー教を圧迫/
ラージプート諸侯の離反/アクバル王子の手紙/マヌッチの記述/
アウラングゼーブのデカン遠征/ビージャープルとゴルコンダの滅亡/
マラータ族の抵抗/北インドへの退陣/絶望の遺書/アウラングゼーブ後のムガル帝国
Ⅴ ムガルの社会
ヒンドゥー教徒
フランソワ=ベルニエ/デリーの日蝕/日蝕の説明/狂信者の自殺/悪党ブラーフマン/
殉死の習慣/一つの事件/焼け死ぬ光景/もう一つの話/恐れを知らぬ狂信/
非道なブラーフマン/臨終の儀式/いやらしいヨギー/この迷信をどう考えるか/
聖人とペテン師
デリーとアーグラ
デリーの王宮、大通り/庶民の住居/商品の展示/貴族のためのデリー
年譜
さくいん