内容紹介
ポーは一九世紀前半の政治的にも知的にも未熟なアメリカ社会の中で,知のために生きるより「愛」と「美」のために生涯を捧げた。金銭のために死ぬことよりも「愛」のために死ぬことを喜びとしたのである。人生は偉大なる闇の中にこそポーの芸術が「心霊」の光を放って,われわれの魂の中に浸透するとき,誰もが寂寞の感にうたれるであろう。ポーの生涯と,その芸術の真髄を知るもののみが己の人生を語る資格を手にするのである。そしてポーの苦悩と愛の彷徨は人類の永遠のアポリアでもある。
目次(内容と構成)
Ⅰ エドガー=アラン=ポーの生涯
一 ポー家の血筋
二 アラン家の一員
三 リッチモンド時代
四 ヴァジーニア大学時代
五 陸軍への入隊と処女詩集の出版
六 陸軍士官学校時代
七 文壇への登場
八 『メッセンジャー』主筆時代
九 フィラデルフィア時代
十 ニューヨーク時代
十一 恋愛事件
十二 冥界への旅
Ⅱ エドガー=A=ポーの思想
一 宇宙観とパスカル
二 死生観と闇の思想
三 グロテスクとユーモア
Ⅲ 詩における愛と美の賛歌
一 プラトニズムの≪愛≫
二 夢の中の幻想と愛
三 「天体の音楽」
四 「大鴉」の幻魔の思想
五 「詩の原理」の美徳
Ⅳ 小説における≪滅び≫のヴィジョン
一 ≪滅び≫とは何か
二 「モレラ」――愛の滅びと再生
三 「ライジーア」――霊魂の浸透
四 「アッシャー館の墜落」――創造への萌芽
五 「ヴァルドマアル氏の病症の真相」――醜の世界
六 心霊的交感原理
むすび
年譜
参考文献
さくいん