内容紹介
ショーペンハウアーは「私の全哲学は一言で表現すれば,世界は意志の自己認識である」と言っている。つまり彼以前の哲学が,人間と世界とを理性を通じてみる立場の合理的世界観であったのに対し,新たに意志的世界観を打ち立てたのである。彼は,理性よりも意志に重きを置くことによって,「見るもの」と「見られる世界」の関係を離れ,「生きるもの」と「生きられる世界」という立場に立ったのである。それは理性の象徴であった近代科学と近代哲学の根幹に向けられた批判でもあった。
目次(内容と構成)
はじめに――ショーペンハウアーと私
Ⅰ ショーペンハウアーの生涯
学者への夢
哲学大系の完成
仕上げの時代
夕映の中で
Ⅱ ショーペンハウアーの思想
ショーペンハウアーと現代
表象と意志
苦悩と解脱
生と死について
共苦=同情の倫理学とインド哲学
実践哲学の優位――カントの影響
ニーチェへの影響と仏教の視点
意志の否定と諦念
ショーペンハウアーを生かす道
あとがき
年譜
参考文献
さくいん