内容紹介
フロムは二六歳のとき外面的にはユダヤ教の信仰を捨てたが,その影響は後々まで彼の生活と著書に色濃く残った。しかしその一方で,彼はマルクス主義の解説書を書くほど,マルクス主義についての造詣が深かった。晩年彼は老子の教えに共鳴したが,それは「正言は反するがごとし」(真理は逆説的である)と説く老子の思想が弁証法的だと考えたためであった。第二次世界大戦後に登場した思想家の中で,フロムほどその著書が広く読まれた人はいないが,それは,左右・東西にまたがるその該博な知識によるところが大きいように思われる。
目次(内容と構成)
フロムをめぐって思い出すこと
Ⅰ 人間フロム
その生いたちと戦争の時代
Ⅱ 精神分析とマルクス主義の統合
分析的社会心理学
母権と父権
権威の心理学
Ⅲ 新フロイト派の形成
『自由からの逃走』
フロイト理論の修正
愛の理論
悪――攻撃性と破壊性
あとがき
年譜
参考文献
さくいん