内容紹介
全集二〇巻に及ぶ和辻の思想には,遍歴的な軸がみられる。自我の貫徹を目指した若き頃の実存主義的方向。そうしたいわば主観への没入から客観的な文化的伝統に対する憧憬への転換。芸術的文化的伝統の異質性が,風土と歴史に基づくという風土論。それを含んだ人間(間柄)学としての倫理学の体系・・・・・・と。が,そうした思想遍歴の中にも一貫したものがあった。わが国の文化に対するあこがれであり,尊皇思想の伝統に対する愛着であった。
目次(内容と構成)
和辻哲郎とわたし ――感激と悔悟
Ⅰ 哲学者をめざして
少年哲朗
文芸へのあこがれ
結婚と影響を受けた人々
Ⅱ 自己表現の道
ニーチェとキルケゴールを通じて
主観的な体験から客観的な芸術・文化へ
思索の日々と家庭生活
Ⅲ 日本論確立への道
日本への回帰
アカデミズムの世界へ
西欧留学と『風土』
Ⅳ 人間の学としての倫理学
倫理学の意義・課題・方法
人間存在の根本構造と空間的・時間的構造
国家論と国民的当為の問題
Ⅴ 戦後の和辻と私人としての和辻
天皇制議論
日本の悲劇の反省 ――『鎖国』
日本特有の倫理思想 ――『日本倫理思想史』
愛と苦悩と
あとがき
年譜
参考文献
さくいん