内容紹介
カミュの小説『異邦人』が日本で翻訳出版されたとき,主人公を全く不可解として拒否する人々と,すべての価値観が虚ろになった社会で「不条理」を感じ,この作品に盛り込まれた意味を読みとり,その虚構の美に新しい文学の曙光を見てとった人々に分かれた。同じことが一八三〇年,スタンダールの『赤と黒』について生じた。批評家の多くは,主人公ジュリアンを人非人とよんだのである。スタンダールが構築した「美しい嘘」,彼がつかみ再現したこの世のものならぬ幸福と憂愁の世界とは何か。
目次(内容と構成)
序文
まえがき
序章 ドフィネ・アルプスとグルノーブル
Ⅰ 愛されざる故郷
出自
少年時代
中央学校
Ⅱ 幸福と、そのありか
青春の日々
チマローザの歌劇『秘密の結婚』
約束の地 ミラノ
Ⅲ 崇高と優しさを求めて
「ロマンティックという名の優しい崇高」 -1
「ロマンティックという名の優しい崇高」 -2
「ロマンティックという名の優しい崇高」 -3
マルセーユ、ウィーン、モスクワ、パリ、ミラノ
「ロマンティックという名の優しい崇高」 -4
音楽と絵画に求めたもの
Ⅳ 「小説」へのあゆみ
政治諷刺の二作品
『エディンバラ・リヴュー誌』の発見と『ナポレオン伝』
『恋について』か『恋愛論』か
マルチ・ジャーナリスト
灼熱の恋と天使の恋
『赤と黒』前夜
Ⅴ 崇高化された恋する人びと
『赤と黒』「ロマンティックという名の優しい崇高」 -5
チヴィタヴェッキア駐在フランス領事
イタリア古文書と『リュシヤン・ルーヴェン』
『アンリ・ブリュラールの生涯』『ある旅行者の手記』『パルムの僧院』
「ロマンティックという名の優しい崇高」 -6
終章 《VISSE,SCRISSE,AMO》
『ラミエル』と死の影』
墓碑銘の意味
あとがき
年譜
参考資料
さくいん