内容紹介
「怒るべきは怒るべし」。これは足尾鉱毒事件に一生を捧げた田中正造の七三年にわたる生涯に一貫して見られた信条である。そこには自らの良しとしないことには,あくまでも従うべきでないという不服従の倫理がありありと漲っている。彼の生涯は,我々に政治とは何か,歴史の進歩とは何か,人間の幸福とは何かを,感動的に考えさせないではおかない。国際的に環境問題が注目をあびている現在,わが国における公害問題の原点である足尾鉱毒事件とそれへの彼のとりくみは,人間と環境との共存に貴重な示唆を与えるであろう。
目次(内容と構成)
はじめに
第一編
Ⅰ 思想の醸成期 ――自力と他力――
一 幼少期
二 六角家騒動
三 上司暗殺嫌疑
四 政治への発心
Ⅱ 思想の展開期(一) ――他力依存――
一 県会議員として
二 国会議員として
三 直訴
Ⅲ 思想の展開期(二) ――自力依存――
一 指導書と民衆
二 不反応の思想的背景
三 指導者のあり方
Ⅳ 思想の完成期 ――自力から他力へ――
一 谷中入り
二 正造と残留民
三 正造の覚醒
四 天国づくり
Ⅴ 思想の反省期
一 その後の谷中
二 運動の教訓
三 現代史的意義
第二編
はじめに
Ⅰ 政治的倫理思想
一 為政者倫理の要求
二 政治批判の根拠
三 根拠の根拠
四 政治論理思想の構造
Ⅱ 田中正造における近世と近代
一 近世民衆思想の影響
二 過渡期の思想
三 近代思想
四 近世的要素の減退
あとがき
田中正造年譜
参考文献
さくいん