内容紹介
夏目漱石の作品は広い層にわたって敬愛され、愛読されている。筆者は漱石のことが話題にのぼると、諸君の目が一段と輝きを増すことを感じている。諸君は漱石の歯切れの良い文章にひきこまれたり、深い教養におどろいたりするだろうが、明治という困難な時代の深刻な問題や人間のエゴイズムの問題を読みとるのはむずかしい。幼児の時から不幸な境遇におかれた漱石は、そういう問題に強い倫理観をもってとりくんだ作家であった。筆者は、『吾輩は猫である』の明るい笑いと同時に、そこにあつかわれている問題の深さに苦悩する漱石を知っていただきたいと思うのである。
目次(内容と構成)
第一編 夏目漱石の生涯
里子から養子へ
立志のころ
世の中へ
イギリス留学
作家の道
晩年
第二編 作品と解説
吾輩は猫である
坊っちゃん
草枕
三四郎
こころ
年譜・参考文献
さくいん