内容紹介
飢えをものともせず、ひたすら理想の文学を求めてきた横光が『蠅』と『日輪』とを捧げて華々しく文壇に登場してきたのは大正十二年のことである。思想乱入という暗い混迷の中で、横光は常に文学の理想の形を求めて生きる。その強い意思による生き方が作品をより一層魅力のあるものにした。この作家がなくなっておよそ七十年。まだ一時代を風靡した文豪が忘れ去られる歳月ではないが、不思議にも横光の精彩は次第に失われてきている。現代文学の課題を多くはらむこの作家を、もう一度よく検討すべき時期であろう。そのためにこの書が少しでも役立ってくれたら幸いである。
目次(内容と構成)
第一編 横光利一の生涯
流転の幼年時代
青春―懸命なる作家修業時代―
処女作のころ
前途洋々
欧州旅行
失意の晩年
第二編 作品と解説
蠅
日輪
春は馬車に乗つて
機械
紋章
旅愁
年譜
参考文献
さくいん