内容紹介
生後間もなく母の発狂という不幸に見舞われた龍之介は、芥川家の養子となり、幼少時を東京の下町で過ごした。早くから豊かな文学的才能の片鱗を見せ、作家への道を志した。師漱石が激賞した『鼻』で文壇にデビューし、『芋粥』の発表で新進作家の地位を確立した。以後は芸術至上主義への姿勢を明確にし、豊かな教養と知的な技巧の冴えを示した。晩年、異常なまでの芸術的精進はその精神と肉体を蝕み、人生への不安と懐疑の深まりにつれ、死の決意を抱かせるに至り自らその短い生涯を閉じた。彼は大正時代の最も卓越した小説家であり、日本近代文学史上比類なき短編作家といえよう。
目次(内容と構成)
第一編 芥川龍之介の生涯
幼年時代の追憶
暗い生まれ
母の生まれた家
小学校時代の追憶
多感な中学のころ
マントと角帽の青春
高校生活とその友人たち
書物の中の青春
第三次「新思潮」の同人
悲しき初恋
漱石山房の若い弟子たち
青年作家の誕生
薔薇色の夜明け
華やかな登場
古都でのやすらぎ
多種多様な衣裳
疲労と転機の秋
新しい試みの「秋」
疲労と行き詰まりと
相聞の詩
死へ飛ぶ病雁
休息を求めて
死の準備
死とその前後
第二編 作品と解説
羅生門
鼻
蜘蛛の糸
地獄変
奉教人の死
舞踏会
杜子春
藪の中
トロッコ
河童
年譜
参考文献
さくいん