内容紹介
我が国における陽明学の祖とされる近江聖人中江藤樹は,全力・純粋な人であった。藤樹は,理想と現実,理と事,内と外の対立葛藤に正面から対決して,目覚めたものの孤独に耐えて,なお人を愛敬した。愛することは人の道であり,愛情のない人間はないと考えた。母を愛し,門人を愛敬し,村人を愛した。決して名利栄達のためではなく,道理を実現し,自己を人間として完成するために全力を尽くし,純粋に生き抜いた人としての藤樹は,その人生と学問において,人間の可能性を開示し,我々に親しみと勇気を与えてくれる。
目次(内容と構成)
中江藤樹について
Ⅰ 若き日、聖人を志して
新しい社会の誕生
少年の日々
士道と儒道
Ⅱ 学問と生活の一致をめざして
脱藩帰郷
村の生活
朱子学への懐疑
『翁問答』の思想
Ⅲ わが人生ついに空しかるべきか
『孝経』の研究進む
藤樹と蕃山の出合い
心学を唱える
宗教思想について
Ⅳ 心学の完成をめざして
晩年の五年間
片時も早く良知に至りたし
藤樹の死
虚像と実像
あとがき
参考文献
中江藤樹年譜
さくいん