内容紹介
振鈴とともにめざめがあり,めざめの中に振鈴が響きわたっているという僧堂の生活は,たんに美しいだけでもなく清らかなだけでもない。だが,五年,十年とたつうちに,耳の細かいひだにまでしみこんだ振鈴の響きが,再びもとのみずみずしい音色を取り戻すことがないであろうか。柳の緑や花の紅が突然この世のものとも思われない新鮮な輝きを放って色づくように,早暁の振鈴が不思議な階調で宇宙の全体に響きわたるときがこないであろうか。道元はそういう経験をすることのできた稀な人間のひとりであった,と私は思う。
目次(内容と構成)
道元の座標
Ⅰ 師を殺し、師を求めて――遍歴の時代――
手がかりをつかもう!
比叡山へ
山を降りる
新天地・中国へ
正師・如浄との邂逅
Ⅱ 心理と人間の探究――創造の時代――
坐禅のすすめ
興聖寺僧団の形成
越前へ
永平寺を開く
Ⅲ 国家と死のはざまで――苦悩の時代――
鎌倉への下向
北条時頼との対決
出家主義への回帰―ふたたび山へ―
「活きながら、黄泉に陥つ」
あとがき
道元年譜
参考文献
さくいん